○○年代論への疑義 [戯言(サブカルチャー)]
よく「○○年代の大学生は~」とか「●●年代のロック」とが、十年ごとに時代を区切って、あれこれ語ることがありますよね。
確かに1960年代と1970年代と1980年代と1990年代に日本で流行った音楽には明らかな違いがあると思います。
(21世紀に入って、ゼロ年代と10年代の流行曲に大きな違いを感じないのは、私の感性が鈍化したからでしょうか?)
ただ、あたかも10年おきに人々の思考・行動・趣味・嗜好が刷新されるかのように語られる傾向というのは、いかがなものでしょうか?
私がこのことを実感したのは、サブタイトルに「'60年代傑作集」と銘打った文春文庫ビジュアルの1冊、『マンガ黄金時代』(1986年)を読んだ時でした。
というのも、「'60年代傑作集」という割には1970年代初出の作品が相当数あったからなのです。
で、収録の全32作品の初出年をカウントしてみました。
以下がその結果です。
・1962年:1
・1965年:1
・1966年:1
・1967年:3
・1968年:6
・1969年:6
・1970年:4
(・1970年~1971年:2)
・1971年:3
・1972年:3
一番古い作品は、1962年11月の『少年』掲載の白土三平「傀儡(くぐつ)がえし」。
次に古いのは、『別冊少年マガジン』1965年8月15日号掲載の水木しげる「テレビくん」。
「1970年~1971年」の2作品は谷岡ヤスジの連載マンガと、赤塚不二夫「天才バカボン」成年誌掲載作品。
(赤塚作品は正確な掲載時期が不明でこのような表記になったのでしょうか?)
数え上げてみると、全32作品中、14作品が1970年以降に掲載されたことになります。
実際に執筆したあと雑誌掲載に数年掛かってしまった作品、構想は1960年代からあったけれども執筆したのは70年代に入ってからという事情もあるかもしれません。
(1970年2月掲載作品は前年に執筆されていてもおかしくはありません。)
あるいは60年代に執筆した未発表作品を書き直して70年以降に発表したケースもあるかもしれません。
この文庫本に収録されているのは主に、『ガロ』『COM』など、商業誌とは一線を画した作家性の強いマンガ家を起用した独自路線のマンガ雑誌掲載作品です。
一言でいってしまえば、アングラ性、カウンターカルチャー性の濃い作品群です。
1968年・1969年掲載作品が1番多いのは、いわゆる学生運動・大学紛争が高揚した時代の空気にシンクロしているのかもしれません。
そうは言っても、70年代初出作品が10以上もあるのは、いろいろと考えさせられます。
まず、時代の雰囲気が実際に作品に現れるのは数年かかるという「遅延」。
また、収録作品が途絶えた1973年には第一次オイルショックが起きて、日本の高度成長は終わりを迎えます。
言ってみるならば、この文庫アンソロジーに収録されているのは「60年安保以降の高度成長期の作品」なのです。
1973年以降、若者の間に「無気力・無関心・無感動(無責任)」の三無主義が拡がり、「しらけ世代」などと揶揄されたりました。
「アンノン族」なる消費社会を謳歌する若者達も現れました。
1970年代初頭、「右手に(少年)マガジン、左手に(朝日)ジャーナル」を携えていた大学生達は、後半には「右手にヤングジャンプ、左手にポパイ」を携えるようになりました。
もし仮に時代に大きな切断線を引くとするならば、第一次オイルショックの起きた1973年に引くべきではないでしょうか。
まあ、これは一冊のアンソロジーからの考察なので、もっと様々な事象から検討すべきでしょうね。
ただ、一桁めの数字がゼロの十年ごとに何もかもが刷新されていくというような荒唐無稽な語り口には疑いを持たざるを得ません。
確かに1960年代と1970年代と1980年代と1990年代に日本で流行った音楽には明らかな違いがあると思います。
(21世紀に入って、ゼロ年代と10年代の流行曲に大きな違いを感じないのは、私の感性が鈍化したからでしょうか?)
ただ、あたかも10年おきに人々の思考・行動・趣味・嗜好が刷新されるかのように語られる傾向というのは、いかがなものでしょうか?
私がこのことを実感したのは、サブタイトルに「'60年代傑作集」と銘打った文春文庫ビジュアルの1冊、『マンガ黄金時代』(1986年)を読んだ時でした。
というのも、「'60年代傑作集」という割には1970年代初出の作品が相当数あったからなのです。
で、収録の全32作品の初出年をカウントしてみました。
以下がその結果です。
・1962年:1
・1965年:1
・1966年:1
・1967年:3
・1968年:6
・1969年:6
・1970年:4
(・1970年~1971年:2)
・1971年:3
・1972年:3
一番古い作品は、1962年11月の『少年』掲載の白土三平「傀儡(くぐつ)がえし」。
次に古いのは、『別冊少年マガジン』1965年8月15日号掲載の水木しげる「テレビくん」。
「1970年~1971年」の2作品は谷岡ヤスジの連載マンガと、赤塚不二夫「天才バカボン」成年誌掲載作品。
(赤塚作品は正確な掲載時期が不明でこのような表記になったのでしょうか?)
数え上げてみると、全32作品中、14作品が1970年以降に掲載されたことになります。
実際に執筆したあと雑誌掲載に数年掛かってしまった作品、構想は1960年代からあったけれども執筆したのは70年代に入ってからという事情もあるかもしれません。
(1970年2月掲載作品は前年に執筆されていてもおかしくはありません。)
あるいは60年代に執筆した未発表作品を書き直して70年以降に発表したケースもあるかもしれません。
この文庫本に収録されているのは主に、『ガロ』『COM』など、商業誌とは一線を画した作家性の強いマンガ家を起用した独自路線のマンガ雑誌掲載作品です。
一言でいってしまえば、アングラ性、カウンターカルチャー性の濃い作品群です。
1968年・1969年掲載作品が1番多いのは、いわゆる学生運動・大学紛争が高揚した時代の空気にシンクロしているのかもしれません。
そうは言っても、70年代初出作品が10以上もあるのは、いろいろと考えさせられます。
まず、時代の雰囲気が実際に作品に現れるのは数年かかるという「遅延」。
また、収録作品が途絶えた1973年には第一次オイルショックが起きて、日本の高度成長は終わりを迎えます。
言ってみるならば、この文庫アンソロジーに収録されているのは「60年安保以降の高度成長期の作品」なのです。
1973年以降、若者の間に「無気力・無関心・無感動(無責任)」の三無主義が拡がり、「しらけ世代」などと揶揄されたりました。
「アンノン族」なる消費社会を謳歌する若者達も現れました。
1970年代初頭、「右手に(少年)マガジン、左手に(朝日)ジャーナル」を携えていた大学生達は、後半には「右手にヤングジャンプ、左手にポパイ」を携えるようになりました。
もし仮に時代に大きな切断線を引くとするならば、第一次オイルショックの起きた1973年に引くべきではないでしょうか。
まあ、これは一冊のアンソロジーからの考察なので、もっと様々な事象から検討すべきでしょうね。
ただ、一桁めの数字がゼロの十年ごとに何もかもが刷新されていくというような荒唐無稽な語り口には疑いを持たざるを得ません。